JP2016開催に向けて西井幾雄会長が開催趣旨を語る
2016年04月01日

インダストリー4.0と人間力、中小中堅企業が取り組むべき「印刷ルネッサンス」



印刷復興の基礎に人間尊重



 企業は創業当初からのお客様の仕事に合わせて設備を導入し、その生産工程と合わせた営業体制を整えてきています。生産量や仕事の内容を反映した機種選定や管理体制を進化させながら、各社固有の事業形態を構築してきているわけです。
しかし今日のIT全盛の市場は、劇的に変化し、複雑な形で発注される仕事は多岐にわたる品種と小量・個別化の度を高めてきています。印刷物はITデバイスとの共存を求められながら、デジタルマーケティングの販促ツールと成り得るかを発注者から問われても来るといえるでしょう。受注営業から創注営業への戦略切り替えにともない、小部数高速生産を可能にする生産・営業形態の構築が必要になって来ています。商業印刷はもとより、書籍ページ物分野でも、紙器パッケージ、ラベル印刷でもデジタル化へ向かう流れが示され、これまでの設備・技術の在り方を再考する必要に迫られています。
 一方で、コンピュータ管理によるデータの一元管理と、設備機能の一元コントロールによる自動・無人化に向かう動きも加速し、コンピュータに出来る事は全てコンピュータにまかせようという「インダストリー4.0」を主軸とした「印刷の未来」を目指す動きも加速化しています。これまで印刷業界はいくつもの変革の波を越えてきましたが、また新たな「プリント4.0」「IOT」「スマートファクトリー」と表現されるトレンド技術思考が、中小印刷企業の頭上に覆いかぶさってきているのが今日の業界の姿といえるでしょう。
こうした「印刷の未来」に向けた流れに対しては、規模の大小にかかわらず実現できると肯定する側に立つことは極めて難しいといえるでしょう。グローバルブランドの商品販促を担う企業や、大量印刷の定期発注を受ける体制を整えている企業は、「インダストリー4.0」の構想と向き合い、生産力の強化を進めることで競争力を高めることになるかもしれません。しかし地場を中心として足場市場を固める小規模企業にとっては、同一構想の中で企業の将来像を組み建てるわけにはいかないでしょう。コンピュータの人工知能を活かした生産技術を導入していくことは、印刷産業として大切なことですが、人間力を軸として展開する「ものづくり」は、いつの時代でも中小企業の基盤技術となっていることを根底に据えておくことを忘れて、私たちの「未来像」を描くことは出来ないからです。
現状の企業体質を強化することを第一段階として、設備の高度化や,紙媒体を活かすITマーケティングへの対応に、穏やかな歩みを進めていくことが、今とるべき第一の対応策ではないでしょうか。この段階を通して既存の企業体制や生産形態を、順次、時代に合わせて整えていくことに、全社一丸となった取り組む時だと考えています。
その過程の中で焦る必要はないと思います。今回のdrupaが「プリント4.0」を謳い、「印刷ルネッサンス」というならば、印刷復興、人間性の尊重を旨とする「ルネッサンス運動」は、企業社員による独自風土の構築と企業文化創出に向かおうとする中小印刷企業の、これからの動きこそが「印刷ルネッサンス」に他ならないと思っています。

ニッチ市場その深化と拡大



 大阪府印刷工業組合が主幹する未来研究会が「差別化技術を生かしながら、新たな価値を付加することで収益に転嫁していく」道筋を打ち出した後を受けて、JP産業展協会は、「差別化と付加価値づくり」への取組を各企業が実際に受け入れるためにはどのようなことが必要なのかを各企業の動向と照らし合わせ、また識者の意見を聞きながら検証を続け、JP展をその報告の場としてきました。未来研究会のスタートから今年で5年目を迎えますが、当初は、横道にそれた路地の迷路の先にある小さな仕事の在り処、それを「ニッチ市場」と考えていました。しかし今、デジタル印刷をベースとして構想される「プリント0.4」の目指す先を、誰もがまだマーケティングの枠組みを創っていない市場を切り開くことにあると考えるのだとすれば、私たちのニッチ市場は「これまでと違う手法で得た仕事」、新規となるお客様を開拓した実績をもって「新たに創出された市場」と見做してもいいのではないかと考えています。
最初は小さな仕事であるかもしれませんが、やがて大きな幹になる「新たな価値」への経路だといえるでしょう。JP展が進めてきた「差別化」と「付加価値づくり」は、その先の目標地点をきちんと持つ出発点、滑走路であったと思っています。今回の「JP2016情報・印刷機材展」が、やがて飛び立つ離陸の場になることを願っています。
 れぞれの企業にはこれまでに培ってきた経営方針があり、その思いを具体化するための仕組みが構築されています。経営と技術、労務の掛け合わせによる「印刷物を収益に代える方程式」を描いている経営者の方々は、時間軸をもとに利益を計測しています。それは現在も未来も変わらない、すべての印刷企業に共通した企業の内部体制その喪です。
それに対して、導入している設備の効率効果や営業の活躍の仕方、あるいは外部の協力企業のありようは、差別化を基本とするため多様性に富み、様々な形態を示すことになるでしょう。企業変革が求められるとすれば、この内部体制と外部形態の両面に、「変化へのきっかけ」が生じる何らかの刺激が加わらなければならないと考えています。
JP展が「付加価値づくり」をテーマとするのは、その企業に集う全社員が参画できる「価値づくり」への関心を呼び起こす「切っ掛け提供」を目的としてきたからです。性格が違い、趣味も、好き嫌いも、やりたいこともそれぞれ異なる人たちが発信する「それぞれの色」の点を集めて、一つの画像に組み上げていくこと。その点の集合体は近くでは判別できませんが、一歩離れて外部から見ると、印刷物と同じように明確な形になって再現されています。
 それぞれの人たちが、世の中に拡散された各種の情報と接し、それぞれの感性で膨潤させ、その中から至る気づきを得てアイデアにつなげる可能性を秘めていると思います。この前向きな人間の創造力を結集することが、企業が次にステップアップするための最も必要な条件ではないでしょうか。JP展が、経営者とすべての働く人々に「付加価値づくり」のテーマを通して、新しい価値の創造を共有してもらう場となればと願っています。そのためにも差別化により造りだされた既存の価値を、さらに高めていくことが、これから始まる全てのことの原点になると考えています。

次の段階へと導く企業風土



 コンピュウターの人工知能に支えられた生産力は、量と時間に制限を受ける受注エリアでこそ、その力を発揮するが、商店街の一軒一軒をまわり、中小の一般企業をクライアントとする市場では、人間力としての発注者と共生するアイデアや企画力が本道となとなるでしょう。しかし、インダストリー4.0というファクトリーオートメーションの次世代構想との対比は、私たちの姿を浮き彫りにしてくれたわけですが、自動化と機械連携のありようを他人事としてはいけないことは言うまでもありません。
 JP展は、付加価値追求5年の節目を機に「販促印刷博」という新たなカテゴリーのもとに,JP展の中の一つのイベントして次回からさらに強化していきますが、同時に「街に出よう!」を合言葉にして、一般市民や商店街、行政との連携による需要創出に向けた航路をナビゲートしていくことになるでしょう。印刷業界と、その技術・設備を補完するメーカーやベンダー、そして一般社会と一体になって「印刷ができること」を模索していくことになるでしょう。
 今回はその第一弾として、JP会期2日まえの6月21日、22日、そして会期初日の23日の3日間、府内を走る地下鉄5路線に中吊り広告を掲出して、新たな視点から「印刷」について思いを寄せていただく機会を作り出していきます。
印刷物が可能とするアイデアとスマホとの連携によるIT情報化社会に生きる印刷機能を、一般市民に理解してもらう企画機材展として、生産設備や会場構成、動員計画を見直していきます。今年のJP展は、JP機材展が変わるプロローグです。次のJP展の幕が上がる合図です。来期からのJP展は「街に出る印刷」の本舞台に替わっていきます。