JP2019

「水性フレキソ促進協議会」発足後の共同事業について

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発足後の共同事業について私案を語る浅野氏

5社情報交流会の金羊社・浅野健会長は、これからの「水性フレキソ促進協議会」が取るべき対応に対して私案として語り、6月末に行う第1回発足会での検討課題とした。

情報交流会で話題として出された案件をまとめ、フレキソの利点とグラビアの利点を合わせ考えながら、その中での差別化方向に付加価値を見いだしていくとした。同時に多くの課題や技術的な問題もあり、フィルム基材やインキ、製版などの関係企業との研究やテストが重要であることを明らかにして、今後の関係強化による体制作りも必要とした。

オフセット印刷の4色掛け合わせで、「お客様が満足してもらえるカラーマネジメント」を実現してフレキソインキによる色調再現に注力したいとの提案もなされた。5社グループと関係各社のベンダーによる知恵と経験を一つに合わせて、クライアントへの提案を行うともした。大量受注に対する印刷機台数の不足に対しても、着実な実績と機械台数の増加を考えながら、予断を持たずに伺っていきたい、とも述べた。

交流会実績を通して長年の課題としていることにも触れ、「水性フレキソインキを使った環境低減などの面を含めて、どのような利点・ポイントをクライアントに与えることができるかだろう」として、サプライヤーと一緒に確実な方策を検討していくと語っていた。

左から前田剛宏(光邦)、宇山明彦(佐川印刷)、木下寧久(佐川印刷)の各氏
左から浅野健(金羊社)、関宏孝(セキ)、村上慈(小松写真印刷)の各氏

【可能な努力】市場対応から技術まで幅広く

今までの情報交流会の中で問題意識、あるいは課題として捉えてきたものに、各社でこれから可能な努力をしてまいりたい。同時に、われわれコンバーターだけで努力してもなかなか良い結果は得られないことも実感としてわかってきました。これはオフセット印刷でも同じことです。

われわれコンバーターを正会員としますと、インキメーカー様、機械のメーカー様、輸入代理店様、製版メーカー様、版材メーカー様など、われわれに対するサプライをしてくださる方たちがいます。この方たちには準会員として、これから私たちに様々な情報と指導もいただければと願っています。発注先であるブランドオーナー様に対しても、賛助会員としての応援をしていただけるとありがたいと考えています。

マーケットに対するアプローチ

今までの交流会の中で2つ大きな問題があり、一つはマーケットに対してこれからどうアプローチしていくかです。ニーズは強く感じるものの、具体的にどうアプローチすればよいのか。これが難しいのが現実であります。クオリティの問題、製造キャパシティの問題、要求品質を満足させられるのかということ。それから、競合にならざるを得ないのですがグラビア式の印刷とどう差別化できるか。付加価値はないのか。このようなことを常に問われるわけです。

発注までに至らない事実

単に環境負荷低減だけでは発注までに至らないのが事実であります。しかし、現状では原反メーカー様から、この原反にあらためて付加価値をつけたいから、それをフレキソ印刷という方法で協力してほしいというオファーも複数あります。今までの各社の実績を眺めてみますと、サニタリー系の紙おむつで使われる透湿シート、あるいはペットボトルのラベル、食品系の軟包装、様々なものを手掛けていますが、それぞれ原反によって回転数もオフセット印刷機以上に異なります。400回転で回せるものもあれば、100回転が限界というものもあります。そういったものに対して、本当にそうなのかということも、各社でトライをしていく必要があります。

技術・営業面での問題

営業系の問題もあります。同時に、それは技術系、製造系の問題、課題に到達します。つまり表裏一体という当たり前のことであります。

製造でオフセット印刷を経験してきたわれわれが、どうしてもお客様にご提案したいことがあります。それは、カラーマネジメントによる掛け合わせのカラー印刷。現状では特色を多用するという従来からの慣習があります。どうしてそんなに色数を使うのかと思わざるを得ないことに直面するのですが、インキの掛け合わせ、ホワイトを除いた4色の掛け合わせで、お客様が満足してくださるような色調の再現が可能なのかどうか。それを確認するためのカラーチャートがあります。そのようなことを、1社1社ではなくて、皆さんの知恵を結集して、時間を結集して、市場に対して、マーケットに対して、クライアントに対して、なるほど、そこまでできるようになったかと感じていただけるようなアピールをしてまいりたいと考えています。

色調再現の問題

現状、まだまだ濃度という意味ではグラビアには及びません。やっとハイライトのきれいな点が印刷できるようになった。それが版材の進化で可能になりました。インキも日々良いものが生まれていますが、それでもまだギャップがあります。いずれにしても、こうしたギャップをインキメーカーさん、版材メーカーさんと一緒に解決・改善をしながら、分科会活動を通して日進月歩、グラビアとの様々な格差を埋めていきたい。同時に、水性インキを用いるというところをさらにアピールしてまいりたい。このように考えています。

市場での評価を得るための課題

われわれの活動にご興味をいただき、わが社もやってみようという方は大歓迎であります。まだまだ5社全部の機械台数を合わせても20台に満たないのです。これから市場でそれなりに評価をいただくためには、機械の台数も全国ベースで30台、50台、あるいは100台、必要だと思います。現状、脆弱ではありますが、しかし今から始めれば、やがては理想の実現も可能ではないかと思います。

今までの交流会の実績として、私たちが今後の大きな課題と捉えているのは、マーケットに対して、もう一度、水性インキを使ったフレキソ印刷をさらにご理解いただくためのポイントは何か、それを絞り込んでいく。もう一つは、技術的にお客様にご安心いただける技術の確立。これをわれわれだけでなくサプライヤーの皆さんと一緒に、ご指導をいただきながら確実なものにしたい。このように考えています。

【質疑応答】勝負はコストか品質なのか

質問:今までの交流会と協議会との大きな差は。

私どもと佐川さんでは版が異なりますので、それを入れ替えて印刷してみるとどうなるか、そういうこともやりましたが、これからは具体的なテーマ、例えば原価を低減するためにはどういう努力が必要か。あるいは要求品質にお応えするためには何が課題なのか。具体的なことをテーマとして深掘りをしていきたい。

それには、インキメーカー様や、CI機は輸入機械ですから代理店様にもご参入いただき、あるいは精好堂さんやスミタさんといった製版メーカーさん、深いノウハウをお持ちですから、ご指導いただければと思っています。確実に具体的なターゲットを決めて、それをいつまでに仕上げるか、期限管理も踏まえながら答えを出していきたい。そこが違うと思います。

質問:分科会を作るということですが、目的に応じていくつか作られるのか。

各社から実際に仕事を担当している方に出ていただいて、できることからやっていく。まずは営業面と製造面、営業の分科会と製造の分科会、2つからスタートしていきたい。私たちが考えると、さらにデジタルはどうなのか。いろんなことを思い浮かべますが、ちょっと待って、確実にやりたいから、気持ちはわかるが、しばらくは引き出しにしまっておく。そんな考え方です。

質問:コストや品質など、どこでグラビアに勝てそうですか。生産というか、今まではグラビアでしたがフレキソでやるようになった。切り替わりのポイントとしてコストなのか、品質なのか。

私どもはグラビアでは刷りにくい原反で、いかにグラビアと真正面から戦うことを避けるか。コストというよりもプライスであります。グラビアのロングランは製版代やデザイン代は無料にしています。それに対してわれわれの製版代はどうかというと、残念ながらタダよりも安くはできない。そういう意味では、真正面からではなくて、フレキソの方が刷りやすいもの、現実に透湿シートは伸縮性があります。あるいは、ペットボトルのラベルでもより薄い原反。あるいは摩擦抵抗が高い印刷などがあります。グラビアのコンバーターさんと対立するつもりは毛頭ありません。それより、お互いの良さを生かしながら例えば私どもがスーパーの商品を一挙に97点、107点を受注して印刷すると、フレキソでは絶対に出ないものがあります。それはグラビアさんにお願いします。逆にグラビアさんからお願いされることも現実にありますから、まだまだすみ分けだろうと思います。

これから環境規制がさらに厳しくなるでしょうが、グラビアコンバーターさんの今までの環境に対する努力は涙ぐましいものがあります。お互いの良さを生かしながら、われわれは後発ですから、新しい原反、今後、様々なニーズに対して果敢に取り組んでいく。

宇山明彦氏も同一質問に答えて

浅野会長がおっしゃった通りで、細かい技術的なことを言いだすと、グラビアでも刷れなかった商品があるはずですが、フレキソがなかったので今まではグラビアで何とかするしかなかったのだと思います。よく伸びる素材は、グラビアはテンションが上がるので苦手でした。やりにくいから、やっていない商品もあると思います。それが、水性に限らず、フレキソに変わればもっと広がるというか、できる商品が増えていくと思います。私もケンカをするつもりはありません。営業が仕事に行くとグラビアと比較されることはよくあります。比較するのではなくて、お互いに良いところがあります。それを生かしていきたいと思っています。

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