JP2022

「JP2022・印刷DX展」の歩き方

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「JP2022・印刷DX展」の歩き方

出展内容の背景にある本質を見ることを期待したい

近年、印刷・加工関連メーカーは多岐に亘る取り組みを進めている(図)。デジタル印刷関連や資材から始まり、自動化フローの構築など、様々な分野で新たな取り組みが進められている。「JP2022・印刷DX展」においても、出展各社より、最新の技術や製品の出展が予定されている。

JP2022印刷DX展_メーカーの取り組み

ここで重要なことは、こうした出展される技術や機器には、必ず本質的な背景があるということである。図に示すように、直接的な背景としては、印刷関連業が有する課題があり、さらには、その課題を生み出す外部環境の変化がある。

例えばデジタル印刷技術の普及の裏には、小ロット・多品種・短納期に対応することが求められる印刷業の課題があり、それは、デジタルメディアの急速な普及によるペーパーメディアの減少や、消費者ニーズの多様化、印刷物に求められる役割の変化などの外部環境の変化により引き起こされているものである。また近年、デジタル化・DX(デジタルトランスフォーメーション)などの分野で注目を集める自動化技術やロボットの利用についても、高利益体質への転換を目指す効率的生産の実現という直接的な課題に加え、その背景にはペーパーメディアの減少、少子・高齢化の進展による労働人口の減少などの環境変化がある。

このように、展示会場で目にする技術、機器には必ず本質的な意味があるということである。来場される際には、出展内容だけでなく、自社の課題、市場の課題、外部環境の変化など、「なぜその出展がなされているのか」を考えていただけることを期待したい。

「JP2022・印刷DX展」における主要出展トレンド

JP展は、他の印刷機材展とは異なり、印刷関連機器ベンダーによる印刷関連システムの出展に加え、販促アイディアグランプリ企画などを通じて印刷関連業の出展も数多くなされている。

ベンダーからの出展は、見える化による生産システムの可視化から最適化、デジタル印刷技術の利用、ワークフローオートメーションなどの自動化・効率化施策、さらには自動化の一つのキーとなる検査装置など幅広い技術、製品が出展される。一方、印刷関連業からの出展では、特殊印刷や加工技術により、これまでにはない質感や表現を可能とし、新たな付加価値を生み出す出展、特殊素材への印刷により、ペーパーメディア以外の新たな市場への印刷産業の拡大提案といった内容が出展される。

ここでは、特に印刷関連機器ベンダーによるシステム展示のトレンドを主要なソリューションごとにまとめてみたい。

MISを通じた見える化技術

スマートファクトリーの一つのゴールとして、自動化や効率生産が挙げられることはすでに述べた。工程の最適化を進める、あるいは最適な生産を柔軟に行っていくためには、リアルタイムに現状を把握することは不可欠である。IoT技術を利用して各システムをリアルタイムにモニタリングする、あるいは顧客情報や営業情報、一方で資材の在庫情報などもデータベース化することで連動させることが可能であり、こうした機能を提供する多くのシステムが提案されている。

各システムのモニタリングを行い、可視化するツールはダッシュボードとも呼ばれる。印刷機、加工機などが現在どういった状況であるかをリアルタイムに把握することができ、次の業務をどのシステムや生産ラインに流していくかを判断することが可能となる。また一方で各システムの情報はデータベースで管理することができるため、稼働実績の分析などを行うこともできるようになっている。

一方、営業情報や在庫情報などとの連動には、MIS(経営情報システム)が提供されている。受注管理から資材管理、一部のシステムにおいては生産指示までを出せるものもあり、製造を一元的に管理しながら効率的な生産を目指すことができる、  

プリプレス処理技術

制作、製版などのプリプレス処理システムは近年のトレンドとしてクラウドシステムへの移行が進んでいる。プリプレスシステムがネットワーク上に置かれることで、複数の拠点からリモート接続しながら利用することが可能となるとともに、ネットワークを介して遠隔地の生産システムにデータを送り込むこともできる。リアルタイムなシステムのモニタリングと組み合わせることで、必要な生産システムを適切に選択し、カラー処理や印刷設定などをそれぞれのシステムに合わせた柔軟な生産が可能となる。

また、印刷物の小ロット、多品種化が進むことで、複数の印刷ジョブを1つの版面に多面付するギャンギング処理や、1本の印刷ロールに複数の印刷ジョブを混在させて印刷するなど、効率的な生産アプローチが模索されている。こうした面付処理も一つのプリプレス処理として自動化を実現するシステムが提案されている。複雑な面付もルールベースやAIを利用することで最適なパターンを導くことが可能となっており、さらには印刷後の断裁、加工システムと連動した形で、次工程への作業指示までを含めて最適な生産を実現することができる。

印刷から加工までの一貫生産技術

印刷物の製造にはプリプレス、プレス、ポストプレスと複雑な多くのプロセスを経て行われる。古くから、各工程間の連携は製造指示書という形で人手を介して行われてきたが、近年は電子指示書の利用が一般的になりつつある。印刷機、加工機などへの稼働指示を、JDF(Job Definition Format)にて行い、各システムからのフィードバック情報をJMF(Job Messaging Format)として受け取ることで、リアルタイムに通信することが実現できる。生産管理システムを中核としてJDF、JMFといったデジタルデータのやり取りにより、製造システムを自動化させて運用することが可能となっており、デジタル印刷機や最新の加工機を用いた生産ラインでは、データ処理から印刷、加工までのインライン処理での一貫生産までが実現されている。

生産ラインを自動運用する際に課題となるのが、製造ラインの障害あるいは製品の検査である。監視用のカメラやバーコードの導入による、トラッキングシステムも運用が可能となっている。

マテリアルハンドリング

省力化の一つのアプローチとして、マテリアルハンドリングと呼ばれる、生産拠点や物流拠点内の原材料、仕掛品、完成品などの移動や運搬を最少限の手間にすることがある。印刷工場においても、印刷前の用紙や印刷物、印刷用の刷版などの資材などを適切なタイミングで適切な場所に運搬することができれば、生産効率を高めることが可能となる。

こうした資材の運搬には、コンベアによる搬送やAGV(Automatic Guided Vehicle・無人搬送車)の利用も増加している。あらかじめ計画された通りの搬送に加え、上位システムからのリアルタイムの指示により、適切に間違いなく無人で搬送することが可能となっている。さらには、製品の梱包から発送といったこれまでは製造とは切り離された処理として行われてきた工程においても、マテリアルハンドリングを介することで一貫した処理として実現することが可能となっている。

ネットワークアクセス

IoT技術の普及により生産システムがネットワークを介してモニタリングすることが可能となることで、スマートフォンなどのモバイル端末でモニタリングや指示ができるようになっている。あらかじめ生産指示を行っておけば、システムが自動で稼働する状況を現場にいることなく監視することができるとともに、障害の発生にも一早く対応することが可能となる。

こうしたネットワークアクセスの機能は遠隔監視にも重要な役割を担い始めている。生産システムを効率的に稼働させるにはダウンタイムをいかに削減するかも一つの課題であり、保守、メンテナンス業務などをネットワークアクセスにより実現することで効率化を図ることができる。

MA(Marketing Automation)

MAとはMarketing Automation(マーケティングオートメーション)の略であり、企業のマーケティング活動において、これまで人手で繰り返し実施していた定型的な業務や、人手では膨大なコストと時間が掛かる複雑な処理や大量の作業を自動化し、効率を高める仕組みのことを指し、そういった自動化を実現するソフトウェアツールをMAツールと呼ぶ。

印刷物は企業の販促ツールの一つとして利用されることも多く、新たな印刷商材の開発や営業活動を行う上で、企業のマーケティング活動と密接に関わりを持つことが求められていると言われる。印刷をビジネスとして捉えた場合、将来的には製造システムのスマート化とリンクしてマーケティングオートメーションも大きな役割を担っていくものと考えられる。

宮本泰夫氏(「印刷タイムス」編集委員)プロフィール

JP2022印刷DX展_宮本泰夫氏

株式会社バリューマシーンインターナショナル取締役副社長。1993年より東洋インキにてデジタル印刷機の技術、アプリケーション開発に携わる。

2003年にバリューマシーンを設立し現職。独立系コンサルタントとして、デジタル印刷を中心とした、基礎技術から、デジタルワークフローやWeb to Printなど、ビジネス技術面でのコンサルティング、企画・セールス・マーケティング面でのビジネス開発コンサルティングを多数手掛ける。

これまでにオンデマンド印刷を核としたコンサルティングビジネスを通じて業界を牽引してきた。主催・共催セミナー講演、社内向け教育プログラム講師、執筆・寄稿など多数。

クロスメディアソリューション研究会運営理事、全日本印刷工業組合連合会印刷営業講座専任講師、一般社団法人日本印刷技術協会客員研究員、学校法人日本プリンティングアカデミー非常勤講師、一般社団法人日本グラフィックサービス工業会懇話会顧問、情報工学修士

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