伝統工芸を支えてきた金銀紙を国内から海外へ
新たな銘柄で流通に挑戦。未来の可能性を切り拓く
株式会社いちはら(京都市伏見区)では、均一に高い圧力を付与できる特注機械を使い、ロールtoロールでのエンボスおよびカレンダー加工を行っている。
主に手がけているのは、日本酒や焼酎の瓶ラベル、熨斗袋や和文具、貼り箱といったパッケージ用の金銀紙や、壁装材として寺社の襖紙に用いられる箔柄模様の金銀紙。いわゆる伝統工芸品を際立たせ、最終消費者の想像を膨らませる引き立て役だ。
同社が所在する京都では、近年、海外からの観光客の流入が拡大し続けている。その余りの勢いに観光公害とまで言われるようになり、住民としては確かにそうした面があることは否めない。
しかし、事業者として考えるなら、言うまでもなくビジネスチャンスだ。
しかも、今は円安。その効果は、原材料やエネルギーなど、コストプッシュ型の値上がりを軽く凌駕する。
同社では、金銀紙を使用した商品も扱う小売店を営んでいるため、海外と国内の観光客の購買力の差に驚き、日本国民として一抹の寂しさを感じつつも、そこに希望を見出す毎日だ。
現在、海外で日本の伝統工芸品を入手できる場所はごくわずかだが、今後もたくさんの海外の人々が観光客として日本へ来て、そこで見聞した伝統、あるいは体験した工芸の技に魅せられたなら、ごく普通に海外でも日本の伝統工芸品を購入できる時代が来るのではないかと期待している。
そこで、同社でも海外市場への進出をテーマに、発売以来40年以上にわたり、さまざまなユーザーに活用された主力商品である高級金銀紙「桂」以外に、新銘柄「神楽(かぐら)」を準備することにした。
「神楽」とは
神楽とは、神を祀るための神事芸能を指す。
詳しくは、五穀豊穣、家内安全、商売繁盛など、さまざまなご利益をもたらす神々を招き共に楽しむための舞や祭りのことだ。
同社の新銘柄「神楽」は、特殊なエンボス加工を施すことで、和紙のような質感と立体感のあるメタリック模様を生み出した。その風合いは、人々の願いや祈りや営みが盛んに勢いを増す様、あるいは恵みの雨が降り注ぐ様を表現している。装丁された品々が顧客の想いを成就させる一助になってほしいという祈りが、この銘には込められている。
継続への道
近年、日本の伝統工芸品の衰退が著しい。
少子高齢社会となって久しい日本で、当面、国内需要の増大を見込むのは難しい。
伝統工芸品が廃れていけば同社の存続も厳しくなっていくため、微力ではあっても、今、できることから始めなければならない。
円安が追い風となっている今、伝統工芸品を海外へ売り込む千載一遇の機会だ。
JETROなどでもすでに始められている取り組みであり、同社としても金銀紙を使用した朱印帳やあぶらとり紙などの商品で、海外へのテスト販売やOEM、卸販売の受注実績はある。
しかし、神楽は購買の主役である「商品」ではなく、脇役である「資材」だ。安定した供給を保ちつつ、需要に応え続けることは、大変な挑戦になるだろう。
そんな挑戦の第一歩として、まずは「JP2026・印刷DX展」へ出展することにした。「興味をいただけたのなら、ぜひお立ち寄りいただきたい」と来場を呼び掛けている。
国内人口が減っても、地球の人口は増え続けている。
諦めなければ道は続くと信じ、国や組織や立場を越え、1人でも多くの仲間と共存共栄で歩んでいきたいと考えている。

株式会社いちはら
小間番号:5-56
612-0881 京都府京都市伏見区深草稲荷御前町78-3
電話075-644-6616 FAX 075-644-6393
出展内容:金彩模様紙
